キウイの朝オレンジの夜



 うふふふ~!やつらはきっと絶叫して騒ぐに違いない。中央の稲葉が鬼教官だったことは悲しい事実だったけど、北の楠本にはそんな噂はないのだから。写メとってないの!?とか聞かれそう。

 不純なことを考えながら、何とか使命は果たす。

 書類を持って支部長に向き直ると、丁度梅沢さんが稲葉さんと楠本さんを交互に見て、口を開いたところだった。

「・・・保険会社って、顔や容姿が入社基準にあったりするんですか?」

 あたしがぽかんとしているのに、稲葉さんは余裕気に言葉を返していく。

「それを聞いたら、私の後輩が喜びますよ」

 支部長、とあたしは稲葉さんの背中をつつく。ヤツは振り向いて、書類を確認した。

「はい、ご苦労さん」

「いえ、わざわざすみませんでした、足を運んで頂いて」

 あたしが謝るのはスルーして、稲葉さんは楠本さんに目をやり、あー!と小さく叫んだ。

「・・・飲んでるー・・・」

 楠本さんがカウンターに座ってビールを飲み干す、その姿もとても格好良かった。あたしだけでなく、梅沢さんも見惚れた様子だった。何しても絵になる人間ているんだなあ!

「本当にいい男って、探せばいるものねえ・・・」

 小さい声で彼女が呟いたのをあたしは確かに聞いた。そして心の中で頷いた。本当に、そうですね。

「稲葉も飲めよ。今日の仕事は終わったんだろ?」

 楠本さんがにやりと笑う。稲葉さんはため息をついて、近づいて言った。