キウイの朝オレンジの夜



「神野、お疲れ様。――――――こんばんは、お世話になっております」

 稲葉支部長があたしに頷き、その後で梅沢さんに会釈をする。

 あたしはたっぷり10秒は固まったあと、やっと声を出した。

「・・・・あ、ええと・・・お疲れ様です」

 そして立ち上がって、梅沢さんに支部長を紹介する。

「上司の稲葉です」

 梅沢さんは華やかな笑みを浮かべて立ち上がり、美しく名刺を取り出す。

「〇〇企画の梅沢と申します」

 支部長と梅沢さんが笑顔と名刺の交換をしている間に、あたしは恐る恐る支部長の後ろを見た。

 少し離れて立ち、美形の男性が微笑んでいる。

 ―――――――きゃあ・・・・。

 あたし、この人知ってる・・・。本社や支社の広報誌でしかみたことないけど、元エリート営業の、楠本さん、だあ・・・。

 稲葉支部長が営業だった頃、他にも北事務所と南事務所のイケメン営業がいて、3人で有名だった。その内の一人、「北の楠本」だ。ホンモノ、初めて見た・・・。超格好いい。

 梅沢さんに断って、稲葉さんがあたしに向き直る。

「神野知ってる?今は本社つきのFPの楠本さん。研修の時に名前聞いたことないか?」