そんなわけで、翌日の木曜日。

 あたしは会社で梅沢さんと待ち合わせをして、彼女の行きつけだというバーに連れて行って貰った。

 ここら辺では一番の繁華街で、うちの会社の支社もある所だった。駅前の小さなビルの一階に入っている落ち着いたバーに、梅沢さんはあたしを連れて華やかに入っていく。

 あまりお酒は飲まないのでバーなんて行くことは滅多にない。あたしはちょっと興奮して店内を見回した。

 オレンジ色の柔らかい照明、カウンターにテーブル席二つ。まだ誰もいなくて、カウンターの中では全身真っ黒のバーテンダーさんがにっこりと微笑んでいた。

「いらっしゃいませ、梅沢さん」

 彼女は嬉しそうに微笑んで、カウンターに近寄る。

「マスター、私、喉カラカラなの」

 魔法使いのような雰囲気のバーテンダーさんは一度頷いて、すぐにお作りします、と言う。それからあたしを優しい目で見た。

「あ、ビール、お願いします」

「畏まりました」

 店に入って楽しそうな雰囲気がいきなりアップした梅沢さんとテーブル席についた。

「ごめんね、明りが足りないかもだけど、私ここが好きなので」

 そういって謝るのに、大丈夫ですと返す。