凪はその男性に駆け寄り、私たちを見ながら話をすると、こちらに戻ってくる。
「あの、色々ごめんね。それと、ありがとう。また明日ね。あ、天野君もまた明日。これ、洗って明日返すから!バイバイっ」
手に持っていたハンカチを見せると、男性の元に戻っていく。
男性は助手席のドアを開け、凪を車に乗せると、私たちにお辞儀をして運転席のドアを開ける。
車の窓から顔を出して手を振る凪に手を振りかえす。
「……なんだったんだろ」
車が遠ざかると、天野がぽつりと呟いた。
「さあ……?」
翌日返ってきたハンカチは、バニラの甘い香りがした。