「九条さん。一緒に帰ってもいい?」 帰る支度をしていると、天野が話しかけてきた。 「……私、事務所に行くけど」 「そっか……じゃあ、また明日ね」 天野は眉を下げて言う。 「…………天野も行く?」 一瞬、捨てられた子犬のような顔をした天野に思わずそう言うと、ぱっと嬉しそうな顔をする。 ……こいつも犬みたいだな。 「いいの!?」 こく、と頷き、カバンを持って教室を出る。