翌日の日曜日、三枝さんがお礼を言いに事務所に来た。
「あの遺言状には、伯父さんの会社が立ち直るくらいのお金を伯父さんに、あとを遺言状を見つけた人が相続しろ、と書いてあったんですが、伯父さんが相続しなかった分は日赤に寄付しました。叔父さんも伯母さんも、従兄弟たちもそれでいいって言ったので」
事務的な話を終わらせると三枝さんがそう言った。
今気付いたけど、猫に遺言状持たせてたら、笠松さんが探し出せるはずがなかったんだよね。あんなに嫌ってたし。
その辺も考えて菊代さんは遺言状を書いたのか……?
「エヌはどうするんですか?」
「私が引きとることにしました。祖母が大事にしていた猫だし、私の……知り合いも猫好きなので」
三枝さんは微笑んで言い、腕時計を見て立ち上がる。