キッチンの方を見ると、鴉(カラス)兄がシンクの上に出した瑠稀姉の擦り傷だらけの両手に消毒液を遠慮容赦なくかけている。


鴉兄が目をやった先を見ると、汚れたタオルでくるまれた汚れた猫。


「……大丈夫?」


目を瑠稀姉の方に戻して訊くと、瑠稀姉は涙目で私に笑いかける。


「大丈夫、じゃない」


うん。大丈夫じゃなさそう。


キッチンから離れ、事務所の電話から京兄に電話をかける。


<もしもし>


「京兄?」


<潤佳か。どうした?>