「本当は寂しいクセに」
ふふ、とお母さんは笑うと、私を見る。
「……本当に道具だなんて思ってなかったんだ」
「そうよ。言葉が少なかった私たちも悪かったけど、子供の幸せを願わない親なんていないんだから。──初恋が実ってよかったわね」
お母さんはそう言って微笑み、朝食の準備を再開する。
「はつこ…………。知ってたの!?」
私がいきなり大声を出した事に驚いたのか、床に寝そべっていたシャルル(オス・ゴールデンレトリバー)が飛び起きた。
「大丈夫よー。お父さんは知らないからー」
とキッチンから楽しげなお母さんの声が聞こえた。

