「──で、何者なんですか。香坂さんは」
ドアの横の壁に寄りかかり、腕を組んだ香坂さんが部屋を見回し、答える。
「俺?『香坂総合病院』の院長の1人息子。で、凪の婚約者、かな」
その回答に、香坂さんの顔を凝視する。
「え!?じゃあ、何で言ってくれなかったの!?図書館で会った時には、香坂さんは私が誰か気付いてたって事でしょう!?」
「話聞いてる時は、『俺』と婚約するのが嫌なんだと思ってたから」
「べ、別に香坂さんが嫌ってワケじゃ……」
多分私は、「親が勝手に決めた」婚約者が嫌なだけで、その人自体が嫌いなワケじゃない、と思う。
「ふぅん……。それと、1回会ってるんだけどね、俺たち。やっぱ覚えてないか。俺だけが覚えてるのが何か癪に障ったからってのもあった」
子供かこの人は。
「1回会ってる、ってどういう意味?」
そう訊くと、香坂さんは私の机の上にあるキャンディポットから飴を1つ出した。

