「悪いようにはしないから」
香坂さんはそう言って微笑み、インターホンを押す。
中からドアが開き、お母さんが出てきた。
「おかえりなさい。涼(リョウ)君も、いらっしゃい」
と、香坂さんに微笑みかける。
『涼君』って香坂さんの事……ですよね。
なぜ名前を知っているんでしょうか。
リビングに行くと、珍しい事にお父さんがいた。
お手伝いさんが人数分のお茶を出すと、香坂さんが口を開いた。
「突然押しかけてしまって申し訳ありません」
「いや、構わないよ」
「今日訪ねたのは、婚約の件で。凪さんが何やら勘違いをしているようでして」
私の名前を知っている事にまず驚き、勘違いとは何だと首を傾げる。

