もう家に帰らなきゃ、とのろのろと立ち上がると、男性が口を開いた。
「……入口で待ってろ。すぐに行く」
「は?」
なぜかを訊く間もなく男性は本を抱え直して歩いていく。
首を傾げながら、おじさんに挨拶をして、入口で待つこと10分。
目の前に白いセダンが停まり、窓が開いた。
「えっと……?」
「乗って」
訝しげな顔をしている事に気付いたらしい男性が付け加える。
「誘拐する気なんてないから安心しろ」
でしょうね。そんな事してこの人にメリットなんてないでしょう。
そう思いながら車に近づき、前に座るか後ろに座るか悩んだ挙句、男性に言われて助手席に収まる。

