寝ながら泣いていたらしく、酷くなった目をなんとかごまかして学校に行くと、学年中が、転校生が来る、と言う話で持ち切りだった。
そして、朝の学活で担任に紹介された、天野駆流君は、どこか影がある、でも、整った顔をした男子生徒だった。
自己紹介をして、クラスのみんなに拍手を貰うと、緊張したように笑顔を見せた。
その笑顔に、近くにいた女子がカワイイ、と言い合うのが見えた。
そこで思い至った。
好きな人を作って、両想いになれば、お父さんも諦めるんじゃないか、と。
そうとなれば、行動するのみ。
家に帰り、帰宅の遅いお父さんを待って、「好きな人を作って両想いになったら婚約とかそういう話は白紙にして」と言った。
返ってきた答えは、「その相手が、結婚とその後の事まで約束してくれる人ならな」だった。
不可能に近い事だったが、やるしかなかった。