いつもは仕事が忙しいとロクに顔を合わせない父親が、珍しく一緒に夕食を取ると言った。
どういう風の吹き回しだ。そう思ったけど、口には出さなかった。顔には少し出てたかもしれない。
家族が席に着いた時から始まっていた父親の自慢話が、いきなり私が話題になった。
「凪。お前、そろそろ高校生だな」
そう?中学卒業まであと10ヵ月あるけど。
それも口には出さず、そうですね、と言った。
「そこでな、お前に婚約者を紹介しようと思っているんだ」
「……え?今、何て?」
何が「そこで」だ。何が「婚約者」だ。全く話が繋がっていないじゃない。
「だからな、そろそろ凪に、婚約者を紹介しようと……」
「冗談もほどほどにしてください。私、まだ中学生ですよ?15歳です」
結婚なんて出来るわけないだろ。一体どこの少女マンガだ。いや、イマドキ少女漫画でもないわ。アホか。何考えてるんだクソ親父。
など、つらつら言いたい事が出てきたが、これも口には出さなかった。