最後は、ショートの愁先輩の番。


いつも私に向けている優しい笑顔は、そこにはなかった。

潤んだ瞳も、今の愁先輩には見当たらない。


鋭い目付きと真剣な表情。


「狼……」

思わず口から出た言葉。


愁先輩の白球を追う姿は、獲物を捕らえる狼みたい。
鋭くて、闘う目をしている。


そんな目に吸い込まれる。引き込まれる。


心も全て、彼のその瞳に奪われた。



「マネージャー、どうかした?」

隣でスコアの付け方を教えてくれていた広瀬くんが聞いてきた。


「あっ……ううん、なんでもない。私っ、お握り作ってくるね」


逃げるように、グラウンドを後にしたのは、愁先輩をこれ以上見ていたら、ヤバいから。

これ以上、今の愁先輩を見ていたら、きっと、私は……