「じゃあ、ごめん。あとよろしく」


そう言って、爽やかな笑顔を私に向けて、愁先輩はグラウンドへと駆けて行った。



ご飯が炊き上がるまで、あと1時間くらいかな。


お茶のためのお湯を沸かしながら、ご飯が炊き上がるまで、今日さとみから借りた漫画本を読んでいると、


「悪いな、世話になって」


そう言って調理室に入って来たのは、野球部監督で生活指導の鬼教師と呼ばれている、川島先生だった。


「おっ……に、教師」


おもわず、“鬼教師”と呼んでしまいそうになり、慌てて口を塞いだ。


聞こえてないよね?


ちらりと先生の顔を見るけれど、聞こえたような素振りは見せず、

「ん?なんだ?」

不思議そうな顔をしている先生に、

「いえ、何でもありません」

怪しまれないようにぎこちなく笑う。