「橙子? 何見てんの?」
いかにも疑わしいと言いたげな目で、桂一が見てる。私の胸の中に冷ややかな風が吹き抜けていくけど、まだ彼の姿はぼんやりと浮かんだまま。
「何にも見てないけど……桂の会社も私の会社の乗っ取りに関係してるの? それと、この前の写真の人たちも関係あるの?」
まともな答えを期待してはいないけど、何か小さなことでもいいから答えてほしい。気持ちの整理は出来ないけど。
桂一が顔を曇らせる。
「俺の会社は……不動産業が主だから乗っ取りとは関係ない。写真のことは知らないって言っただろ、それに関わるなって言っただろ?」
「不動産? 写真の人と何の関係があるの?」
「だから、写真のことは忘れろって言ってるだろ、橙子が関わるようなことじゃない」
明らかにムッとした顔をする。
やっぱり彼の事は話したくないらしい。意地でも吐かせたくなるけど、どうしたらいいんだろう。
考えを巡らせてたら、思い出した。
「美香の彼氏、いや、桂の会社の社長さんって体調悪いの? 金曜日、市民病院で見たんだけど? でも受付時間はとっくに過ぎてたから……誰かの面会だったのかも?」
「ああ……外出するとは聞いてたけど詳しいことは知らないよ」
「その時にも厳つい感じの人たちが何人か一緒にいたけど、やっぱり桂と同じ会社の人? 同じ会社の人なのに何で桂は知らないの? そんなに大きな会社なの?」
面倒くさそうな顔をした桂一は、口を尖らせて窓の外へと目を逸らした。

