何気ない日々 -短編集-


今年、寿退職するんだって。

式はもうすぐ挙げるって。

すごいよね、幸せそう。

最近女の子に囲まれてたのはそのせいだって。

私も聞いて驚いちゃった。

体育のあの先生と結婚するんだって。

あの先生優しくていい人だよね。


先生、結婚するんだって。




私の口からは残酷な言葉がたくさん出た。
あなたが先生を好きだって知ってる唯一の人間が、あなたを闇に引きずり落とす。

こんなことしたってあなたは私を見ない。
そんなのわかってる。
わかってる。


「知ってた。」

笑顔で言うあなた。

「先生から誰よりも先に聞いてたよ」

笑顔で言うあなた。

「指輪も見せてくれた。」

笑顔で言うあなた。

「ウェディングドレスの試着した写真も。」

笑顔で言うあなた。


だいすきなあなたの笑顔が歪んで見えた。

歪んで見えなくなった。