温かいご飯とか、 にぎやかな食卓とか、 もう忘れた。 ラップがついているご飯をとり、 大きなテーブルにひとり 椅子に座った。 午後10時。 見たいテレビもなければ 長電話したい友達もいない。 俺は右手に箸をもち、 おかずを口に運んだ。 父親は5年前、家を出たっきり帰ってこない。 母親は夜の仕事をしている。 だから、朝は寝ていて 俺が帰ってくるときには もう出掛けている。 まともに話したのは 1ヶ月前だろうか、 それ以前かもしれない。