「それは、こちらを油断させるための相手の作戦です!!縁談を結ぶことによって、麗蓮を逆らえなくさせるのが向こうの狙いなのです!!!」


必死に反論すると、


「ま、いいではないか。それではな。」


父がそう言って、母の手を引いて部屋を後にしてしまった。



「ちょっとお待ちください!!」


私も追いかけようとしたが、二人の姿はもう、長い回廊の向こうに消えて、見えなくなっていた。


「全く・・・。逃げ足の速い。」


回廊でため息をついていると、後ろから控えめに、李玖姫さま、と呼びかけられた。


呼んだのは、いままで後ろに立って私たちの話を聞いていた佳燕だ。


「知っていたのか?」


訊ねると佳燕は、申し訳なさそうに頷いた。


「前々から、縁談のお話が来ていたことは陛下からお聞きしておりましたが、まさかお相手が珀黎王とは・・・・。」


驚いた様子の佳燕の言葉に、私は女にしては短すぎるといわれる髪をかきまわした。


「断ることは出来そうもないな。」









呟くと佳燕が、静かに、はい。と応えた。