深紅の薔薇と漆黒の貴方



「いつのまに...」


時間の流れはとても速いと思う。



「さ、そろそろもどりましょうか。皆が心配しますから。」



本当はもっとゆっくりしていきたかったけれど・・・



「そうですね。」





方向をかえすと王が手を差し伸べてくる。



それをやんわり振り払って、もと来た道を歩こうとした。




すると、ふと後ろから肩を引かれた。




体がよろめいて焦ったが、背中に痛みは感じない。



代わりに、爽やかな花の香が広がった。




王の広い腕に受け止められていたのだ。





その事実を悟って、私の顔には朱がのぼる。



「やっぱり、もう少しこうしていましょうか。」



そう言って髪に少し顔を埋めた王の吐息が首筋にかかり、こそばゆい。



「や、め、 止めて下さい!無礼な!!!」




払おうとしても、男の腕力には敵わない。




「いいではありませんか。夫婦なんですよ、私たちは。」