「たまたま同じ場所にいただけのことです。」
そう言って、長い黒髪をつい と耳に掛ける。
そのしぐささえも自分よりうんと女性的だった。
「ほら、この蘭なんて素晴しいですよ。」
進み出た先にあるのは、薄く青がついた鈴蘭。
水をもらったばかりなのだろう、水滴が花びらの上で光っていた。
この王と話をするのはあまり好きではないが、私も美しいものを目に入れるのは好きなので、自然と素直になる。
「いい色ですね。朝方の空と同じ色.......
心が落ち着きます。」
私の言葉に王が空を見上げる。
「ほんとうだ。丁度同じ色ですね。」
私も顔を上げる
目にうつったのは、すっかり明るくなった空。
鈴蘭の色をそのまま付けたような淡い青だった。
