「こちらです。」
案内された部屋の襖には、薄桃色の胡蝶蘭が大きく一輪。
目を見張る程美しくて、私はくぎづけになった。
「それでは、わたくしはこれにて。」
そんな私に頭を下げて、そめは去ってしまった。
私は、その場に礼の姿勢をとり、地に額をつける。
「陛下。李玖にございます。参上つかまつりました。」
すると、襖が静かに開き、目の前に人が立つ気配。
「お待ちしていましたよ、さぁ、中へどうぞ。」
顔を上げると、さらりと夜着を着こなした珀黎王の姿があった。
もしかすれば、婚儀のめかし込んだ時より余程うつくしいかもしれない。
私は小さく頷いて、珀黎王に促されるまま、部屋の中へ足を進めた。
