満足のゆくまで湯浴みを楽しんでから、そめが用意してくれていた夜着に着替えて自室へ戻る。


到着すると、部屋の襖を開きながらそめが言った。



「李玖様、今夜の 新月の刻(午前零時頃)に、陛下からお呼ばれがあるかと思われます。身支度を整えてお待ち下さい。」




ついに来た。


覚悟はしていたがいざその時が来ると少し緊張しないでもない。




「分かりました、そのときは知らせて頂戴ね。」


「承知致しました。では、新月の刻に。」



頷いて襖を閉めた彼女の去ってゆく足音を見送って、私は一気に肩の力を抜いた。



落ち着け、落ち着け。



初夜の一つや二つ、怖くもなんとも無い。



ここに来てから、覚悟ばかりで、せっかく湯浴みですっきりした気分が台無しだと悲しくなった。




数時間後、新月の刻に約束どおりそめは迎えにやって来た。




「李玖様、新月の刻です。さ、参りましょう。」




「えぇ、では、案内を宜しくね。」






彼女の後について歩く珀黎王の部屋まで続く廊下は、酷く長く感じた。