「あら李玖、こんなに気持ちのいい日に部屋で籠もって本を読むばかりではもったいないわよ?」



すかさず反論する姉に、李玖はため息をついた。


「ただ読んでいるのではありません。この国に必要な知識を身につけているのだと、何度申し上げれば分かるのですか。」


妹の小言に、利美瑚は頬を膨らませた。


「全く・・・。あなたは頭が固いのね。そんなんじゃ嫁ぎ先がなくなること請け合いよ。」


「私は嫁ぐ気などありません。この国の軍事部隊に志願するつもりです。」


今度は利美瑚が呆れる番だ。


「あなたまだそんな危ないことを言っているの?やめなさい、軍隊志願なんて。」


李玖は目を少しそらして答えた。


「姉上の心配して下さるお気持ちは嬉しいのですが、これは小さい頃からの夢ですので。」


「あなたには幸せになってもらいたいのよ。わたしの大切な妹だから。」


切実に言っても、妹は頑なだった。


「私は今でも十分幸せです。姉上は、晋殿との縁組の支度を進めて下さい。」


「あなたを放って幸せになんてなれない。」





部屋を去る李玖を、利美瑚は悲しげに見つめた。


「麗蓮の薔薇、か・・・。あの子にはそんな刺々しい名は相応しくないのに。」


つぶやきは空に消えた。