案内された先は、大きな広間。
おそらく、ここで婚礼の儀が行われるのだろう。
支度されている飾りも料理も、麗蓮の何倍も豪華でうつくしくて、つい地団駄を踏んでしまいそうになる。
「ここでお待ちくださいませ、もうしばらくすれば、陛下がお見えになり婚礼が行われます。」
言うと、そめや侍女たちは皆下がり、広間は私だけになった。
どんなやつに嫁ごうとも、私は己をつらぬいてゆこう。
決意も新たに唇を引き結ぶと、外から声がした。
「陛下のおな~り~!!!」
頭を深く下げると、襖が開き足音がこちらに近づいてくる。
私の調度前で止まった足音の持ち主は、私に向かって言った。
「李玖姫、面をお上げなされませ。」
その丁寧な物言いを訝しく思いつつ顔を上げて、私は言葉を失った。
そこにいたのは、この世の者とも思えぬほど美しい、袴姿の女人だったのだ。