その言葉は、私には意外だった。
この国の民が、あんな卑劣な王族をしたっていたとは。
それはきっと、この国の光の当たる明るい部分しか知らぬからなのだろうが。
そめに向かって、私は静かに首を振る。
「残念だけど、それはどうあっても無理な事ね。
どんなに自国のことを思うにしても、他にいくらでもやりようはあったであろうに・・・
国を滅ぼすことしかしなかった弦黒を、私は許さない、絶対に。」
闇を知る私の言葉に、彼女は悲しそうな顔をする。
「そうですか。」
光を拒絶するように、私は自ら御簾を下ろした。
それからしばらくして、再び御簾が上がる。
「李玖様。弦黒王宮、到着にございます。」
そめが恭しく頭を下げると、後についていた侍女たちも次々とこうべを垂れる。
見上げた先には、憎らしいほどに立派な城。
私は深く息を吸い、輿から降りて門をくぐった。