「…うん。まぁ今は、いいや。
はぁっ…けどなんか、気抜ける」
成太は納得いかない様子で、私の額にデコピンをした。
「鈍感すぎ」
そう言って成太は立ち上がった。
「もう…行くの?」
私の声に成太は頷く。
…もう、行っちゃうんだね。
「見送りは、いらない」
「……なんで?」
玄関を出た瞬間、成太が冷たく言った。
私は見送りに行くつもりだったから…その言葉が苦しく感じる。
でも、成太は逆だった。
「イギリスに帰れなくなる気がするから。
…アキが泣いたとき、そばにはいられない」
成太は深く帽子をかぶる。
…私が空港で泣いてしまうのが、成太には目に見えているみたいで。
そばで私を支えられる存在が、もういない。
それが、成太は苦しいんだ。

