次の日、自然と目が覚めた。

昨日までの怠さも頭痛もない。

すっきりとした目覚めだった。

身体を起こすと、頭から濡れたタオルが落ちた。


あれ……こんなのした覚えないのに。


手に取って横を向くと、ベッドの横に司がもたれ掛るように寝ている姿が目にとまった。


まさか……ずっといてくれたの?


司の頭に静かに手を置く。

少し撫でて、その寝ている姿に、「ありがと……」と小さく呟いた。

それに気付いたのか、形の良い眉を少し崩して司は目を開けた。


「ごめん、起こしちゃった?」


頭から手を退け、司に尋ねる。

頭が覚醒していないのか、少し考えてから司は思い出したように首を振った。


「熱、大丈夫?」

「うん、平気」

「そっか」


安堵の微笑みと息をこぼして、司は伸びをした。

首を鳴らし、肩を揉んでいる。

もう一度息を吐き出し態勢整えた司に、あたしは司の首に腕を回して、首元に抱きついた。


「どしたの?」


尋ねてくる司に返事を返さない。

目を閉じて温もりを感じる。

香りも雰囲気も、何もかもが心地良い。


「ねぇ、恥ずかしいんだけどさ……」


こういうことの経験は全くない。

素人なんだよね。

黙って言葉を待ってくれる司がありがたい。


「本当に、司のこと……その……好きだよ」

「うん、ありがとう」


抱き締めていた腕を少し緩める。

額どうしをくっつけ、目を閉じていた。

ゆっくりと開けると、司と目が合う。

頭を少し傾け、再び目を閉じる。

どちらかともなく、唇が触れた。

本当に短い、触れるだけのキス。

それだけで幸せだった。


唇が離れてから、再び目が合って、恥ずかしさからか苦笑のような笑顔がこぼれた。


「風邪、伝染っちゃうかもね」

「それでも、いいよ」

「そうなったら、あたしが看病するよ」

「うん、そうして」


その言葉に頷いて、少しだけ開いたカーテンの隙間から外を眺める。

降り続いた雨は止んでいて、優しい日差しが隙間から漏れて、部屋の中に差し込んでいた。