それから一週間後、西医体に向けて出発した。
行先は大阪の堺にあるグラウンド。
今年の主管が大阪にある大学なため、大阪で行われる。
前日入りで、今日は移動のみだった。
会場からは少し遠いところにあるホテルに宿泊した。
1マネ全員同じ部屋だった。
気を遣わなくて楽でいい。
のんびりとしていると、祐輔と大樹、康太がトランプを持って遊びに来た。
先ほど行われたミーティングで、祐輔が先発、大樹と康太はベンチに入った。
緊張しているのか、いつもより少し口数が少ない。
「祐輔、緊張してんの?」
メガネを掛け直しながら景子が尋ねる。
「んー、ちょっとね」
「なんか、ねぇ。先輩差し置いて俺達がベンチ入っちゃっていいもんなのかな、と」
大樹がキングのカードを出しながら呟いた。
「いいんじゃないの? あたしはスポーツしてこなかったから分からないけど、実力が上の人が出れば。それが通用しない時もあるかもしれないけどさ、出れるんだから、楽しみなよ」
本心だった。
出たくてもベンチに入れなかった人だっている。
なのに選ばれた選手が戸惑ってたら、勝てるものも勝てなくなってしまうんじゃないか。
その分、スタメン、ベンチに入った人は、その人達の分まで頑張った方がいい。
そうすることが、チームには大事なことなんじゃないかな。
「……そうだな」
「確かに。よし、楽しもう!」
祐輔が笑ってジョーカーを出す。
その後に3を出して、「上がりー」と言った。
「あ、マジか、このやろ」
「お前かよ、ジョーカー持ってたの」
いつもの3人だった。
下手に緊張するより、こういう感じの方がいいんだ。
「さて、明日に備えて寝ようか。ありがとね、みんな」
散らばったトランプを片付けながら祐輔が大樹と康太に視線を向けた。
「そうだな。寝るか」
「うん、寝よう」
二人とも頷いて立ち上がった。
その姿に、「じゃ、また明日。頑張りよ」と美咲がベッドの上から言った。
「あ、紗雪」
部屋を出ようとした時に祐輔が振り返った。
笑顔を見せて、「ありがとうな」と手を挙げた。
「いいえ。明日は頑張れ」
ひらひらと挙げた手を振って、三人は部屋を出て行った。
少し煩かった部屋が静かになる。
長く息を吐き出して、あたしは立ち上がった。
