水曜日。
この日は、昼から全学のサッカー部と練習試合だった。
夏休みに入る直前ということや、試験のため講義自体が今はない。
そのため、ほとんど夏休みのようなものだ。
天気は相変わらず良く、この時間から気温はどんどん上がっていく。
土曜と比べると、はるかに今日は暑い。
じりじりと肌が焼け付く感じがする。
首にタオルをかけて、美咲と二人で籠とペットボトルを使って水を運んでいた。
「暑いー……」
空いている左手でタオルを使い、美咲は汗を拭く。
歩きながら空を見上げる。
綺麗な快晴の青空に一本の飛行機雲が描かれていた。
「溶ける……」
「何言ってんの」とあたしは笑った。
「今年の夏は……おかしい。こんなん体験したことないわ」
「大阪の方が暑いんじゃないの?」
「言うほど暑くないで。こっちの方が暑い」
確かに今年の夏は暑い。
異常と言っていいくらいだ。
どこかでは観測史上最高気温を更新したらしい。
何故今年に限ってそんなに暑いのか。
去年は冷夏だったのに。
ベンチの近くにその籠を置き、それを使ってポカリを作る。
試合の時はポカリ、練習はお茶と使い分けている。
クーラーボックスに入っている氷を入れ、冷たくする。
夏は氷がどれだけあっても足りない。
それが終わって、グラウンドに目を向ける。
赤黒の縦じまのユニフォームと白いユニフォームがお互いにボールを追っている。
赤黒が医学部の方だ。
周りの雰囲気からも試合は動いていないことが感じられる。
もう一度、空を見上げた。
先ほどは一本だった飛行機雲がもう一本増えていた。
クロスして十字を描いている。
綺麗な青に白の線が映えている。
こういう空が一番好きだ。
純粋に綺麗で、心が洗われるよう。
歓声が横で上がる。
美咲が喜んでいる姿を見て、ゴールが決まったのだと分かった。
フィールド内の様子から、ゴールを決めたのは祐輔だった。
やっぱ、あいつ上手いんだね。
