地元から離れ、そこまで都会ではない地方大学の医学部に入学して、早いもので5年。

実家に帰りたくても、いろいろと忙しくて帰ることができなかった。

なので、久しぶりに地元に帰ることができる。

これも幸いで、火曜日の実習は午後スタートなため、朝一で帰ることができれば間に合うのだ。

のんびりとはできないけど。


手にしたままだった手紙を元に戻し、洗面所へ向かって顔を数回洗った。

特に外出する予定もないけれど、顔を拭き、寝癖てくしゃくしゃのままの髪を整えた。

お湯の入ったポットを使ってインスタントコーヒーを作り、それを持ってソファーに座った。


「5年ね……。意外と早いなぁ」


いろいろなことが起きた5年だった。

大変でもあったし、楽しくもあった。

見知らぬ土地での暮らしは最初は大変だったけど、友達にも先輩後輩にも恵まれ、あっという間の5年だった。

もうすぐ6年目を迎える。


マグカップを口元に運び、コーヒーを口にした。インスタントコーヒーだけど、この苦味が美味しい。


そういえば、この街で出会ったのも5年前だったっけ……。

よくコーヒーとか紅茶とか淹れてくれたな。


懐かしい味が少しずつ蘇ってくる。

こんなインスタントものなんて比にならないくらい美味しかったな。

あれから、1年が過ぎていたのだ。


テーブルにあるリモコンでiPodを繋げたコンポの電源を点ける。

暫くして、流れてくる音楽に耳を傾けた。昔から大好きだった曲だ。


ねぇ、元気にしてる?

早いもので、もう1年だね。

あたしは、元気でやってるよ。


懐かしいメロディーに少し思いを馳せ、ゆっくりと目を閉じた。