「……っていう苦い誕生日のお話」
残り少なくなった缶を傾けて飲み干し、テーブルの上に缶を置いた。
美咲は黙って聞いていてくれて、同じように缶を空けた。
「結局、伝えてはないんやね」
その言葉に頷き、「どっちも大切だから。あの時はそう考えれなかったけど、やっぱり無くしたくないんだよね。智也も夏希も」と続けた。
「なんか、ええなー。そういう関係の人がおるの」
「まぁ、ね。たまには嫌になるときもあるけどね。考えてること読まれたりすることもあるから」
空になった空き缶をごみ袋に入れながらあたしは笑った。
もしかすると、夏希にはあたしが智也を好きだったってことを知られていたかもしれない。
今となっては別にそれほど気にはしていないけど。
知られていたところであたしから言うこともないし、夏希がわざわざ聞いてくることもない。
智也が選んだなら、それでいいんだ。
高校卒業と同時に二人とは離れることになった。
あたしがこっちに行くことになったから。
一緒にいることが辛くて、逃げたわけではない。
自分の夢のためだった。
実際、第一志望の大学は、地元にある夏希と智也の進学した大学だった。
それでも今でもたまに連絡を取り合ったりしている。
二人は地元近くの大学で生活を送っている。特に心配はしていない。
あの二人が離れることはないし、昔からの付き合いだから、相手のことも家族のように知っているから。
この話をして、少しだけ胸が苦しくなった。
気持ちに蓋はしたはずだけど、やはり、少しは漏れ出てしまっている。
言葉にすると、心が痛くなる。
まだ、好きなんだろうね……。
片付けをして、美咲の部屋を後にした。
ついで、ということで空き缶の入ったごみ袋はあたしがマンションのごみ置き場に捨てに行った。
地元よりも綺麗に見える星々は月にも負けないくらい強く光輝いていた。