「明日だよ」
電話越しに夏希が言った。
休みである日曜日にぐっすり寝ていたあたしは、夏希からの電話で目を覚ました。
身体を起こして、ベッドの側にある小さいソファーに腰を下ろした。
幼馴染みの山本夏希は、小学校から高校までずっと一緒だった。
今は地元で就職していると聞いている。
「んー、わかってるよ」
「本当に? 明日7時からだからね」
「うん」
電話の内容は明日の同窓会についてだった。
すっかり忘れていたのだが、この電話で思い出した。
昔から面倒見のいい夏希のおかげだ。
「紗雪は変わんないね、適当なところ」
「適当って、何がよ」
「同窓会忘れてたこととかよ。また明日連絡するね」
返事をすると、電話が切れた。
寝癖でクシャクシャになっている髪を掻き上げる。
手にしていた携帯をテーブルの上に置いた。
気付かれてたか……。
幼馴染みには、何もかもお見通しってとこなのか。
それともあたしの口調から読み取ることができたのか。
分からないけど、ちょっとしたことが夏希にばれるのはいつものことだった。
部屋に掛かっている時計に目をやると、ちょうど10時を示していた。
朝か昼かの微妙な時間帯。
早起きでもなければ、遅すぎるわけでもない。
でも、こんな時間帯が好きだった。
3月も終盤に差し掛かっている。
本棚に置いているハガキなどをまとめておくケースを取り出しにソファーから立ち上がった。
見慣れた住所からのハガキを見つけ、それを持ってソファーに座りなおした。
裏面を見ると、“同窓会のお知らせ”という文字が見出しで書かれていた。
同窓会……ね。
卒業して以来だから、5年振りかな。
他の同級生は、働いているんだろう。
まだ学生のあたしは、大学で学んでいるが。
幸いにも明日、祝日の月曜日はあたしの実習も同級生の仕事も休みらしい。
誰が動き回ってくれたのかは知らないけど、見事に休みが重なったため、同窓会を開くことができるようになったと聞いた。