お父さんがしんだ…



ぼくは…ううん、ぼくたちは泣いた。

いつもやさしかったお父さん。

ぼくとぼくのふたごのおにいちゃんはすごく泣いた。

「しぬ」ってことがどういうことかはわからなかった…
お母さんは「いなくなること」だって、「会えなくなること」だって言った。

それは、

あの大きな手で、かみがくしゃくしゃになるくらいあたまをなでてもらえないってことだ。

げんかんでまっていても「ただいま」ってドアをあけて、おヒゲをジョリジョリしてもらえないってことだ。

「しぬ」ってことはよくわからないけど、それはすごく、すごくいやだ。

だからおにいちゃんといっしょに泣いた。

「なんで?」って。
「いやだ!」って。

お母さんの手をひっぱって泣いた。
ふとももにしがみついてわめいた。

お母さんはただ、ただ、だまってた。