「ど、どこにこんな見境なくキスマークつける馬鹿がいるんですか!」



限度があります! と鬼気迫る勢いで詰め寄る私に対し、彼はひどく冷静だった。



「? ここにいるだろう。

君に狂わされた、馬鹿な男が」



だが、そんな優美な男は気づいていない。



「何格好つけてるんですか! 私は怒っているんです!」



そんな態度が、余計に私の火に油を注いでいることに。



「別に格好つけてるつもりなどないんだが。

…ふむ。怒った君もなかなか可愛らしいな」



脳の血管をブチッとする勢いで怒っている私に対し、彼は成程と首肯していた。