水元が連れてこられた場所、そこは、さっきまでいた玄関に比べると狭く、不思議と、まるで昼間のように明るかった。

春の日差しのように暖かいその場所の真ん中に、真っ白なテーブルと椅子が二つ。

テーブルの上には、綺麗なデザインのカップが二つ。

そのどちらもが紅茶のいい香りと共に湯気を立てていた。

「んなっ!?」

ふと見上げたその場所に、あるべきはずの天井がなかった。

空、青空、雲間で浮かんでいた。

「この世界は現実に存在しないって言ったでしょ?この部屋は特別空間の歪みがひどいんだ、空だけだけどね」

「は...ははっ...もうわけわかんない」

「あっはは、まぁ慣れればなんでもないよ。さぁ座って座って」

言われるがままに椅子の片方に座る。

「ミルクティーだよ!あ、ケーキも食べる?」

「あ...ありがと、紅茶だけいただくよ」

そうやって水元と、自分が落ち着くまで他愛もない話をした。