書き込みを始めたとたんに言われた。
『なんかあった?』
ハッとした。勘づかれないようにわざと明るく振る舞ったのを、おかしいと思ったのだろう。ちょっとした変かに気づいてもらえたのが、少し嬉しかった。でも、言えるわけがなくて。
「え?なんでもないよ?」
『嘘だろ。なんか変だもん。
言ってみ』
言ってもいいのだろうか。せっかく仲良くなったのに、嫌われたくない。でも、聞いて欲しい。勇気を出して。
「リスカしちゃったの」
『は?』
怖い。嫌われたかな…?
『どうして?そんな苦しいことあったのか?』
言っても大丈夫なような気がした。翼くんなら聞いてくれるかもしれない。
「お母さんに暴力、振るわれて…。なんでキレられたのかもわからない。ただの八つ当たりなの。ひどいこと、いっぱい言われて傷付いた。だけど、言い返すこと出来なかった。私は悪くないのに。悔しくて悔しくて…気が付いたらリスカしてた。」あぁ、どんな反応するんだろ。やっぱり嫌われるよね、こうゆうの。
『愛香はさ、その八つ当たりをマジで受け止めてたの?』
「だって抵抗できないし…」
『馬鹿正直だよな、愛香って。そんな八つ当たりなんか受け止める必要ねぇじゃん。』
でも…怖くて何も言えないんだよ。逆らえないの。
「反抗したら何されるかわかんないからさ」
『前にもそうゆうのあったのか?』
「しょっちゅうだよ」
『辛かったろ』
あ…。なんか…。
「うん。痛いし、怖いし、すごく辛い」
『苦しいときはいつでも俺に言いな。ずっと側にいるから。』涙が溢れてきた。翼君の言葉が傷ついた心を優しくほぐした。「ありがとう」
『って言っても、画面越しだけどな』
それでも、嬉しかった。そんな風に気にかけてくれて。
『あ、そうだ!メアド交換しね?掲示板だと書き込み気付かねぇしな。嫌ならいいけど。』
騙されたらとか、悪用されたらとか、そんなことは考えずに交換した。だって、このときにはもう翼君を好きになっていた。