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「悪かったわね、圭史……」
「別に…。
母さんも騙された口だろ?」
「それは、そうなんだけど………。
なんとなくね………。
まさか、あゆちゃんが圭史のことを好きだなんて思ってもみなかったから、こんな展開予想もしてなかったわ」
「それは俺もだよ」
帰りの車の中、いつも強気の母さんが珍しく謝ってきた。
確かに、今回の法事に不参加のつもりだった俺を強引に参加させたのは母さんだった。
だけど、だからと言って俺は母さんを責める気なんてなかった。
母さんだって騙されたほうだし―――…。
それに、逆に考えれば今回にことではっきりとあゆに言えてよかったのかもしれない。
今日会わなかったら、あゆはまだずっと俺に期待してたかもしれない。
「下手に期待を持たすほうがコクだ。
あまり気に病むことはない」
今までずっと黙っていた父さんが、落ち込む母さんの肩を軽く叩く。
それから、父さんはバックミラー越しに俺のことを見てきた。
「圭史…。
あゆちゃんのためにも、茅乃ちゃんのことを大切にしろよ」
「ああ…」
そんなこと言われなくてもわかっている。
俺は茅乃のことが好きだし、茅乃を手放すつもりもない。
いや…、手放せないと言ったほうがいいかもしれない。
あいつが傍にいるだけで、俺は俺でいられるんだ。
きっとそんな相手は茅乃一人しかいないから。
これから、ずっと先も―――…


