抗議の声をあげる前に、あたしは圭くんの手に掴まれた状態で強引に部屋の中へと連れて行かれる。
部屋の中に入ると、よく高校の化学室で嗅ぐような実験の独特の臭いが鼻についた。
一瞬、その臭いに眉を顰めると背中をどんと押されて奥の方へと進まされた。
すでに圭くんから手は解放されていて、振り返ると、圭くんは白衣に袖を通していた。
初、圭くんの白衣姿に、思わず立ち尽くし見惚れてしまっていた。
そんなあたしの視線にすぐに気づいた圭くんは眉を顰めて、あたしを見てくる。
「なんだよ…」
「い、いえ! なんでも!」
ぐりんと顔を逸らすと、「ぁあ!?」と威嚇するような声が聞こえてきた。
し、しまった~~!!
反抗的な態度を取ってしまった~~!
圭くんのいたぶりを恐れて、あたしの顔は無意識のうちに引きつってしまう。
「おいっ、水無月! いいかげん説明しろよ。勝手に出て行ったかと思うと、今度はこの子を連れて戻ってきて。この子が誰かってぐらい、俺たちが知る権利はあるだろ?」
「別に言うほどのものじゃない。彼女だよ、彼女」
「ちょ、ちょっと、圭くん!?」
何を重大発言をそんな簡単に流すように言ってくれちゃってるわけ!?
そういうのは、もうこうちゃんと落ち着いてきちんと話さなくちゃいけないというか、なんというか……
「なんだよ、お前。お前が俺の彼女っていうのは、本当のことだろうが。それとも何か? まさか、未だに俺と付き合っているつもりはないとか思ってんじゃないだろうな」
「そ、そんな、滅相もございません!」
なぜか威圧的に責められるあたし。
「じゃあ、いちいち止めようとするな」
うっ……。
はい……
圭くんにきっぱりはっきりと言われ、あたしはただ単に項垂れた。


