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時間的に、夕方から夜へと移行しているような時間に校内は静かだった。
一度、まだ講義があるような時間に真澄に引きつられるような形で連れて行かれたことがあったけど、その時のにぎわいが嘘のような静けさ。
さすがに、七時を回ったぐらいだから、講義も終わって、学生たちも帰っているような時間なんだろう。
でも、高校のように全く人がいないというわけじゃなく、ところどころ広い校内には光が漏れ、そこから聞こえる人の声。その声が、あたしがいつも学校で聞く、うるさいほどのにぎやかさを持つものではなく、落ち着いた声に高校と大学の違いを見せつけられたような気になる。
「茅乃、こっち」
珍しさから、きょろきょろと辺りを見渡していたら名前を呼ばれて、あたしは慌てて圭くんの後を追いかける。
そして、廊下を突き進んだ先に明かりが見え、微かに賑やかな声が聞こえてきたところで、圭くんはピタリと足を止めた。
「茅乃。からかわれるかもしれないけど、お前、絶対に俺の近くにいろよ」
「へ?」
からかわれる?
それって、何?
「ほら、行くぞ」
意味がわからないままのあたしの腕を掴んで先へと歩き出した圭くんは、話し声と光が漏れる部屋のドアをノックもなしに、徐に開けた。
「お? 水無月、お前、今までどこに行ってたんだよ! 急に『ちょっと出てくる』って言ってから、全然帰ってこないんだからな」
中からは圭くんを責める男の人の声。
だけど、圭くんはそれに答えることもなく、無言で部屋の中へと入っていく。
ど、どうしよう…。
これって、あたしも圭くんの後について行くべきなんだよね?
で、でも……
部外者のあたしが簡単に入っていい場所とは思えないんだけど――…


