「晩御飯のことなら、気にしなくてもいいわよ。久々に、パパと二人っきりの夜を過ごすから」
「いやいやいや。あたし、ちゃんと帰ってくるからね!」
「あら、そうなの? こんな時間からだから、てっきり圭くんのおうちにお泊りかと思ったわ」
「って、ママ! そこは、外泊するとなると止めるところでしょ!? 何を容認しようとしてるのよ!」
「だって~…。茅乃と圭くんはいずれは結婚するんだし~…。だから、ね?」
何が『ね?』なんだ?
「と、とにかく! ・・・出かけてきます……。なるべく早く帰ってくるから…」
「あらあら。時間のことなんて、全然気にしなくていいから、ゆっくりしてきなさいな。圭くん、ここ最近、忙しいんでしょ? 久しぶりのデートなんだから、楽しんでおいで」
「う、うん…」
たぶん、圭くんが忙しいっていう情報は、圭くんのお母さんからもたらされた情報だろうな。
そう思いながらも、あたしは「いってきます」と小さく挨拶をしてから、玄関でショートブーツを履き、家を出た。
すでに家を出ると、前には車が一台ハザードランプを付けた状態で停まっていた。
それは、確かめることもないほどよく知っている車で――…
あたしは車の窓を軽くコンコンとノックする。
すると、運転席で携帯をいじっていた圭くんは顔を上げて、こっちを見た。
そして、運転席から助手席へと体を傾け腕を伸ばすと、ドアを開けてくれた。
恥ずかしいけど、実はこの圭くんの動作って、なんとなくドキドキするんだよね。
絶対に圭くんには言わないけど。


