「ああ~…、茅乃。よかった~…、来てくれて~…」
来てくれて~って、何を暢気に!?
「ちょ、ちょっと、ママ、何してんの!? 危ないでしょうが!!」
あたしは慌ててプルプルと震えているママが乗っている椅子を掴む。
ガタガタと動いていた椅子があたしの手により固定されたところで、ママはホッと息を吐くと、キッチンの上の棚に手を伸ばし、土鍋を取り出した。
土鍋を持ったまま、ママが椅子から降りたところで今度はあたしがホッと息をついた。
「いや~…、助かったわ~…」
うふふと含み笑いを浮かべながら、土鍋をコンロの上に置くママ。
助かったわ…って――…。
何を暢気に―――…
大体――…
「どうして、コマ付きの椅子の上に上るわけ!? 危ないに決まってるじゃん!」
「だって~…」
不服そうに口を尖らせるママ。
だけど、普通に考えてあり得ない。
まあ、あり得ないことをしちゃうのがママなんだけど――…
なぜか土鍋を取ろうしていたママが脚立代わりに使っていた椅子。
その椅子の下にはキャスターが付いていた。
その椅子はリビングに置いてあるパソコンのための椅子なんだけど、それをママは使っていたわけで――…
普通、高い場所にあるものを取るのに、土台がしっかりしていないものを台替わりに使うかな?
普通なら、絶対にあり得ないよ。
「とにかく、注意してよね! 今はあたしがいたからよかったものの、いない時だったら誰に助けを呼ぶつもり? 誰も助けてなんてくれないよ?」
「そうね~…。その時は、困っちゃうわね」
なんて、しみじみと言うママ。
全くわかってない。
反省もしてない。
まあ、ママに何を言ったところで無駄だっていうのはわかってるけど――…。
いい加減、このあまりの天然ぶりは治して欲しい。


