そんなよくわからない心理に襲われるんだ。


 ―――よく考えれば、それって一歩間違えれば、欲求不満だよね?


 まさか、そんな風にあたしが感じているなんて、圭くんは気づいてないだろう。


 ―――というか、絶対に気づかないで欲しいけど。


 気づかれると、恥ずかしすぎるから…。


 それに、圭くんのことだもん。


 きっと、優しさから気づかないふりなんて絶対にしない。


 ここぞとばかりに、あたしのことをからかって辱めるに決まってる。


 根っからのドSだからね。





 だから、絶対に気づかれてはいけない。


 だけど、元々勘の鋭い圭くん。


 そして、隠すのが下手なあたし。


 気づかれるのは時間の問題かもしれない。


 もはや、圭くんがそれに気づくか、あたしの覚悟を決めるのが早いのか、その競争かも――…


「ハァ~…」





 ため息を吐きながら、あたしはベッドの上に寝転ぶ。


 真っ白な天井は、もちろん、圭くんの部屋の天井とは違う。


「会いたいな~…」





 不意に漏れた自分の気持ち。





 あたし、この前からおかしい。


 いつもなら、家庭教師の時に会うだけで満足してたのに、あの日からあたしは圭くんに会いたくて仕方がない。


 もしかしたら、ここ最近、学校やカフェのバイトのほうが忙しくて、前ほど会えていない反動から来ているのかもしれないけど、それでも会いたいと思う気持ちは、前とは比べ物にならないぐらいに強い。





 前は、家庭教師の日に会えて、会えない日は電話やメールだけで満足してたのに………。


 おまけに圭くん、本当に忙しいみたいで、メールや電話も減ってるんだよね……。


 仕方ないことだけど、なんか寂しい。


 そして、こうなって気づいたことが一つある。


 あたし、今まで圭くんからほとんど電話やメールを貰っていて、自分からしたことってほとんどないんだってこと。


 これじゃ、あたし、圭くんのことなんて、別に好きじゃないみたいだよね?


 こうなって、初めて自分があまりにもそっけない彼女だということを知った。