「あ、あのね、圭くん…」





 こっちは必死に眠りにつこうとしているのに、茅乃はそんなことなど全く知らずに話しかけてくる。


「―――なんだよ」


「あたしね、ちゃんと覚悟を決める準備するから」





 突然、何を言いだしたのかびっくりする発言に俺は思わず目を開けた。


 すると、つぶらな大きな瞳でまっすぐに俺のことを見てくる茅乃と目が合った。


「えっと…、すぐには無理だけど…。ちゃんと、逃げないで覚悟を決めるから、もう少しだけ待ってて」





 まさか、茅乃がそんなことを言うとは思わなかった。


 いつもとは全く違う、やけに素直な茅乃。


 だけど、茅乃はすぐに俺に背を向けたかと思うと、「そ、そういうわけだから!」といつも変わらない、強気に言い放った。


「……わかったよ…」





 笑いを抑えつつ、俺は茅乃を抱きしめながら耳元でそう囁いた。


 すると、茅乃はビクンッと体を震わせた。











 しばらく、抱きしめたままの状態でいた俺たち。


 だけど、すぐにどちらからともなく、俺たちは眠りについた。