本当は、自分でもわかってる。
心づもりなんて、きっといつになってもできない。
その時になったら、心づもりをしていたところで、そんなもの無意味でしかない。
それは、あたしのただの言い訳。未知の体験に踏み出す勇気のない自分の逃れるための言い訳でしかない。
圭くんのことは好き。
この気持ちに偽りなんてものはない。
今までに感じたことがない胸の高鳴りは、圭くんにしか反応しない。
なのに、その先への一歩が踏み出せない。
こんなことを考える自分が嫌だ………。
本当は一番の理由なんて、わかってる。
あたしは、嫌なんだ。
圭くんがあたしに触れるたびに、そのなれた手つきの先に、幾人もの女性の姿を思い出さずにはいられないことに。
そんな醜い自分の気持ちが嫌で仕方がないんだ。
「・・・なんか、小っちゃいな~・・、あたし・・・」
真澄や拓斗には、さばさばしている性格や考え方が男っぽいってよく言われるけど、こんなことでうじうじと悩んでいる自分は、やっぱり女だったんだと思いなおさせられる。
過去のことなんて、考えても仕方がないことだってわかってる。
そんなことをいちいち気にしていたら、何も前に進めない。
そんなことわかってる。
だけど、自分でもよくわからない、この複雑な気持ちをどうすればいいのかわからない。
心の中がぐちゃぐちゃで、どす黒い感情だけが渦巻いているように、あたしには思えて仕方がないんだ。
そして、そんなどす黒い感情を持っている自分が、醜く汚いように思えて嫌になる。
もっと、何事にもど~んと構えて、どんなことも受け入れられる広い人間でいたい。
あたしは、自分が心の広い人間だとは思わないけど、圭くんの過去を知っているし、自分でも寛大なほどにそのことを受け入れていたと思っていた。
だけど、実際は違う。


