こんなに喜ぶのが分かっていたら、


“アマルフィ”をメインに旅行プランを立てたのに。


“女”はブランド物や美味しい料理など、


贅沢を欲すると思っていたが、


杏花に限っては当てはまらないらしい。


高級モノは嫌がるし、特別扱いも嫌いなようだ。


コレって……俺という‘一条’を全否定されてる気がするんだが。


「ねぇ要、何時出発?」


「8時30分ローマ発」


「えっ!?じゃあ、もう急がないと!!」


杏花は慌ててバッグを取りに行った。


ホテルの目の前に駅があり……結構助かったか?


俺と杏花はユーロスターでローマ・テルミニ駅を出発した。


早い時間なだけあって観光客も疎ら。


俺らは1等室の車窓から流れる景色を眺めていた。


俺らの1等室は個室型になっていて、


定員4人で2人ずつ向かい合う座席。


その名も『サロッティーノ・ビジネスクラス』


料金は通常の1.5倍だがそんなのは関係ない。


杏花を喜ばせれるなら幾らだって払ってやる。


運よく相席の客はおらず、俺と杏花の2人きり。