「遅かったね。洗剤あった?」
化学室に戻ると、今度はガラス棒を磨く佐崎先輩が迎えてくれた。
またそんな笑顔で……。
「ありましたよ。」
手にした洗剤を水で薄めて、試験管を拭う。
「どう?」
再び先輩が俺の手元を覗いた。
ふわっと香るシャンプーの香り。
抱き締めたいな……。
そんな欲求を抑え込み、平然を装って笑いかける。
「落ちたみたいです。」
「良かった」
そう言って、はにかんだように笑った先輩。
か、可愛いな……。
「早坂くん?大丈夫?」
「……あ、大丈夫です。他のもやりますね。」
顔を背けるように、俺は他の試験管を手に取る。
佐崎先輩の笑顔は、ある意味凶器だ。
俺の理性を惑わせる。


