「もう一度言いますから、今度はちゃんと聞いててくださいよ。」


顔をのぞき込まれて、僕の頬は一気に温度を上げた。


頷いたけど、ぎこちなかったかも…。



早坂くんは僕の唯一の後輩。

年下だけど僕より背が高くて、頭がよくて、でも少し意地悪で…。



僕は友達が少ないから、早坂くんの存在は大きかった。



でも最近、存在は更に大きくなってきて……。
ちょっと困り気味。



「土曜日、一緒に出掛けませんか?」
「うん……――――え!?」


出掛ける!?
早坂くんと?


「化学の参考書が欲しいんです。先輩、化学得意でしょう?選ぶの手伝ってください。」
「でも僕じゃ役に立たな――」
「迷惑でしたか?」
「迷惑じゃ、ない…けど……」
「それじゃあお願いしますね。」
「…うん……」



ああ、僕のバカ。

でも嫌って言えない。

だって嫌じゃない。


だけど………