「あと、妃稲が無事でよかった。いつもは帰り際に教室で待ってるくせに、今日はいないんだもん。んで、京香とかいうお前の友達に聞いたらここにいるっていってたから。よかった、間に合って。」



ドキン


ドキン


ぽつぽつとしゃべりだした稜。


独り言のようで私に意見を求めてこない。



「心配した....」


「うん、ごめん。」



稜のその声はいつもに増して色づいていて、私の胸の鼓動を高めていく。


何で、こんなにドキドキしてるんだろう....



「本当は、誰に助けに来て欲しかった?」


「...え?」



私はその質問に問い返した。


稜が裕哉のことを知っているわけがないし、私が助けに来て欲しかったのはきっと稜だから何にもいえなかった。


「...なんでもない。今のは忘れろ。」



稜はそれっきり下を向いて何かを考え込むように目を閉じた。