「それとさ、野上稜ってフルネームで呼ぶのやめてくんねえ?」
「え...?」
嫌だったの?
何にも気にしていなかったけど敵対視していただけにそうなってしまったらしい。
「何って呼べばいい?」
「ん~。じゃあ、稜様。」
は...?
思わず口が半開きになる。
大丈夫かな、この子は。
哀れな目で見てしまう自分。
「冗談に決まってるだろ。稜でいいよ。」
「りょ、う?」
恋人っぽい響きに一瞬違和感を覚える。
私って、男の子を呼び捨てで呼んだことって裕哉しかないんだ。
改めて恋愛経験の少なさを思い知らされた。
「ん。じゃあ、俺も妃稲で。」
「なんか、くすぐったい。」
背中がぞわっっとしながらもけして嫌じゃなかった。



